『名作コピーに学ぶ読ませる文章の書き方』を読みました。コピーライター鈴木康之氏による、題名通りの文章の書き方の本。
文章の書き方についての本はこれまで何冊か読み、その都度「なるほど」と思うものの、自分の文章の上達具合はあやしい限りなのですが、この本はいままで出会ったこの類の本の中では一番勉強になりました。有名な広告コピーをネタに、読んでもらうための文章の書き方の、一番底辺のところを教えてくれます。
おもしろかったところを引用してみます。
文章の一行目は、二行目を読みたくなるように書く
笑っちゃいますがそのままです。そのままですけど、そのとおりですよね。もちろん、読み手としたら流し読みしたり読み飛ばしたりすることもあるんですが、「その行の先の部分をちゃんと読んでもらう」というところに気を配ることは大切です。言葉遣いであったり、文字の大きさであったり。
そもそもキャッチフレーズというものは、キャッチしてどうしようというのかというと、ボディコピーへ導くものです。ボディコピーの一行目へです。ですから、この広告のように一行目のツカミが強ければキャッチフレーズのような形式的なものは要らないのです。
気持よくなった私は続けて二球投げました。「二行目は三行目を読みたくなるように書けばいいのさ」「三行目は四行目を読みたくなるように書けばいいのさ」と。若者の目の輝きが増すにつれて、私はまた新しい心配を抱えることになり、もう少し現実的にフォローし、親切にサービスしてあげなければならなくなりました。「それがなかなかそのとおりに書けないから難しいんだ」と白状しました。
そして、「難しいからこそ、うっかり書き進まないように、読む人がこの文章で次の行を読みたくなるだろうかと、一行ずつ自己チェックをしていくことが大事な作業になるのさ」と話しました。
いい話が聞けるまで聞く
これは、第三部の「話の見つけ方」で、「書き上手になろうと思うな 聞き上手になれ」というコピーで始まる章で出てくる話。「コピーは読者への土産話」なので、クライアントの話をヒアリングしていて、おもしろい話に出会うまでは終わらせてはいけないというくだり。
そして、その章のまとめ。
人にあったら、全身テープレコーダーになりなさい。実際にテープレコーダーも使いなさい。
いい話が聞けるまで、聞きなさい。待ちなさい。ぜひだれかに聞かせたい、という強い衝動に襲われるまで待ちなさい。
いい話の中身だけでなく、その人独特の言葉遣い、クセやナマリ、息づかいまでも、土産として持ち帰りなさい。
一節一義、一文一義
一節には一つのことを書け、ふたつ以上を盛り込むな、という話。これはよく言われますし、僕自身よく気をつけていることでもあります。このブログでもそうですが、ひとつの文章が長すぎるなと感じたら、意図的にふたつの文章に分割したりします。何文字という目安は「読みやすいor読みにくい」で判断していることが多いのでなんとも言えないですが、「1文章70文字」とどこかで聞いたことがあります。
いい文章の古典的なルールに一節一義があります。一節にはふたつのことを書き込むな、一つの意味で満たせ、二つのことを書きたいのならふたつの節に分けて書け、というルールです。そうした方が読む人が読みやすいから、という理由です。文章は読む人のため。昔からの基本なのですね。
さて、たとえばブログですが
さて、ブログも文章です。戯言やひとりごとのレベルで書いている人もいるとは思いますが、僕はやっぱり読んでもらいたくて書いています。もちろん書きたいことを書きたいように書いてはいますが、読まれるためにいくつかの工夫をしています。読み返して、誤字脱字を減らしたり(たまにやらかしてしまいますが)、読点を増やしてみたり、文章を分割したり段落を分けてみたり、漢字をひらがなに開いてみたり。
そういった技術的なところだけでなく、呼んでもらうための気配りの仕方や心構えみたいなものを学んだような感じがしました。
文庫本で700円です。いい本です。
ジョセフ・シュガーマンの『10倍売る人の文章術』という本でも
同様のことが書かれていました。
「最初の段落を読ませる。広告の要素は、このたった一つの目的のために存在する。」
「最初の段落の唯一の目的は、読者に第二段落を読ませることである。」
成功しているコピーには、この要素が詰まっているので参考になりそうですね。
私も読んでみます。
シュガーマンも同じことを言っているのですね。
一行ずつの自己チェックはちょっと注力してみたいところです。
いい本でしたよ。