地域別に売り上げを見ていたり施策が打てるのであれば、「都道府県別のインターネット人口」を出しておくと便利です。上の図は、ある条件で出した都道府県別インターネット人口の図です。
とりあえず簡単に(乱暴に?)「都道府県別インターネット人口」を出すなら、「都道府県別の人口×都道府県別のインターネット利用率」で可能です。
まずは「都道府県別インターネット人口(仮)」を出してみる
都道府県別インターネット人口(仮)
= 都道府県別人口 × 都道府県別インターネット利用率
都道府県別の人口
「都道府県別人口」は、総務省から住民基本台帳に基づく人口として発表されています。総数だけでなく、年齢別や男女別でも数字が出ています。執筆時点で最新のものは平成24年8月発表のもの(そろそろ新しい内容が発表されるかもしれません)。
総務省|住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(平成24年3月31日現在)
都道府県別の人口は、「平成24年住民基本台帳年齢別人口(都道府県別)」のエクセルファイルでダウンロードできます。
都道府県別のインターネット利用率
「都道府県別インターネット利用率」も、総務省が毎年行っている情報通信に関する調査で発表されています。サイトで確認するなら、情報通信白書が便利です。執筆時点で最新のものは平成25年度版。
総務省|平成25年版 情報通信白書|インターネットの利用状況
ページ下部の「都道府県別インターネット利用率(個人)(平成24年末)」から、エクセルやCSVデータがダウンロードできます。
都道府県別インターネット人口(仮)
とりあえず両者を掛けて、「都道府県別インターネット人口(仮)」を算出してみました。
▲都道府県別インターネット人口(仮)
「平成24年住民基本台帳年齢別人口(都道府県別)」(総務省)、および「都道府県別インターネット利用率(個人)(平成24年末)」(総務省 平成25年版 情報通信白書)より
ただ、ここではどの世代にも等しく「インターネット利用率」がかかっている状態です。しかし、例えば20歳代と70歳代ではインターネット利用率は異なります。ここからもう少し工夫してみましょう。
「都道府県別インターネット利用率」ではなく、「世代別インターネット利用率」を掛け合わせてみる
世代別インターネット利用率
総務省が毎年行っている情報通信に関する調査には、「世代別インターネット利用率」も含まれています。先ほど紹介したページの「属性別インターネット利用率及び利用頻度」にデータがあります。13歳~49歳までは90%を超えているのに対し、60歳以上からは大きく数字を落としています。
総務省|平成25年版 情報通信白書|インターネットの利用状況
ページ中部の「属性別インターネット利用率及び利用頻度」から、エクセルやCSVデータがダウンロードできます。なぜか60歳代だけ「60~64歳」「65~69歳」の2つに分かれていることに注意。
各都道府県の世代別人口に世代別インターネット利用率を掛け合わせてみる
先ほど紹介した「都道府県別人口」も、世代別の人口が出ていました。両者の間で0歳から19歳までの区分が異なるのですが、ここでも少し乱暴に「インターネット人口」を出してみます。
- 0~4歳は省く
- 人口「5~9歳」にはインターネット利用率「6~12歳」の数字を適用する
- 人口「10~14歳」にはインターネット利用率「13~19歳」の数字を適用する
- 人口「15~19歳」にはインターネット利用率「13~19歳」の数字を適用する
ビジネスとして「都道府県別インターネット人口」の利用を前提としていることと、インターネット利用率の調査から1~2年経ってさらに低年齢層の利用が進んでいると考えられることから、上記のような対応としました。
「都道府県別インターネット人口(5歳以上)」の算出
さて、「都道府県別の世代別人口」に「世代別インターネット利用率」を掛けてみます。
都道府県別インターネット人口(5歳以上)
= 都道府県別の世代別人口 × 世代別インターネット利用率
▲都道府県別インターネット人口(5歳以上)
「平成24年住民基本台帳年齢別人口(都道府県別)」(総務省)、および「属性別インターネット利用率及び利用頻度」(総務省 平成25年版 情報通信白書)より
先ほどの「インターネット人口(仮)」と比べて、首都圏や大都市で少し数字に変化が出ました。
ビジネスとして利用するのであれば、「20歳代から40歳代」というように、ターゲット層の世代別で絞り込んで「ターゲット層の都道府県別インターネット人口」を出せばよいでしょう。
自社の顧客データベースと照らし合わせる
活用としては、まず自社の顧客データベースと突き合わせてみるのがよいでしょう。「ウェブ経由での顧客/インターネット利用を前提とした顧客」と領域を限定しなければいけませんが、どの地域(都道府県)に顧客が割合として多いのか、リーチできているのかを出し、顧客の割合が小さい地域にアプローチが可能かどうかを検討していくことになります。
- どの都道府県に顧客層が割合として多いのか
- 顧客層の割合が小さい都道府県はどこか
- 顧客層の割合が小さい地域に限定したアプローチは可能か、施策はあるか
- 見込みの獲得ボリュームのインパクト(将来的なものを含む)は、施策コストに見合うものか
アクセス解析データと照らし合わせる
Webサイトのアクセス解析データと突き合わせると、潜在顧客層を含めてどの地域に割合として多いのかの把握ができます。活用としては、先ほどの自社の顧客データベースのものと同じようなものになるでしょう。
- どの都道府県に訪問ユーザーが割合として多いのか
- 訪問ユーザーの割合が小さい都道府県はどこか
- 訪問ユーザーの割合が小さい地域に限定したアプローチは可能か、施策はあるか
- 見込みのコンバージョン獲得ボリュームのインパクト(将来的なものを含む)は、施策コストに見合うものか
Googleアナリティクスで地域(都道府県)別の訪問ユーザーの状況を把握する
Googleアナリティクスには「地域」レポートがあり、日本の都道府県別の状況がわかります。このレポートは「訪問数」をベースにしたレポートですので、「ユーザー数」をベースにしたレポートをカスタムレポートで作成するとよいでしょう。
▲地域レポート(ユーザー数)のGoogleアナリティクスカスタムレポート
地域レポート(ユーザー数)のGoogleアナリティクスカスタムレポート
このような「地域レポート」だけであれば、「どの都道府県からのアクセスが多いか、コンバージョンが多いか」といった母数でまずは判断しなければなりません。東京など人口の多い都道府県が必然的に大きめの数値になりがちで、評価がしにくくなります(もちろん、コンバージョン率や回遊の指標で都道府県別に比較した評価は可能です)。
インターネット人口における都道府県別の訪問ユーザー率を出す
あるサイトの都道府県別のユーザー数がこのような状況だったとします。
▲都道府県別 ユーザー数(Googleアナリティクスより)
先ほどの「都道府県別インターネット人口(5歳以上)」に照らし合わせて、インターネット人口における訪問ユーザー率を出してみると、都道府県別の様相がだいぶ異なります。
※今回は「都道府県別インターネット人口(5歳以上)」の数字をそのまま母数にしていますが、実際に利用する際は、ターゲット層の世代で数字を絞った方がよいです。
▲都道府県別 インターネット人口における訪問ユーザー率
(エクセルで算出後、Google ChartsのGeochartで描図、数値はサンプル)
▲都道府県別 インターネット人口における訪問ユーザー率(数値はサンプル)
コンバージョンの状況も合わせて見て、リーチと効果から施策を考える
コンバージョンの状況も合わせて見れば、どの都道府県からの訪問が割合として多くて、またコンバージョンに至りやすいのかの比較ができるようになります。
▲都道府県別 コンバージョン率
(ここではコンバージョン数/ユーザー数で算出。数値はサンプル)
- 九州にあまりリーチできていない可能性がある。アプローチはできるか
- 四国の各県の訪問ユーザー率は高くないが、コンバージョン率が他県よりも高い。より積極的に集客できないか
こういったことを考えていくことになります。
アクセス解析の地域データの精度はそれほど高くないことに注意
Googleアナリティクスなどで都道府県などの地域データを扱う際、それがIPアドレスを根拠にしたものであれば正確性はそれほど高くないことに注意しなければなりません。さらにモバイル端末からのアクセスが多ければ、地域情報が不明だったり不正確になりがちです。
ただし、精度は高くないとはいえ、ある程度の母数が確保されていれば、おおまかな傾向の把握には十分使えると思います。
参照:
サイト訪問者はどこから来ている? 地域の精度はどれぐらい? 「地域」レポートを正しく活用しよう | Web担当者Forum
「スモールデータでがんばるアナリティクス」でもいいじゃないですか
都道府県別インターネット人口を活用する視点を述べてきました。今回もどちらかといえば古典的なデータの一種だと思います。地域別に売り上げを見ていたり、県別に施策が打てたりといった前提でなければ「So what?」になってしまいがちなデータですが、ビジネスによってはボリュームインパクトが出るところもあるでしょう。
分析は自社データだけではありません。簡単に入手できるデータと組み合わせても、新たな視点が加わります。「スモールデータでがんばるアナリティクス」でもいいじゃないですか。
都道府県別データの日本地図への描画は、Google ChartsのGeochartが便利です。
Visualization: Geochart – Google Charts — Google Developers
日本地図そのものをチャートとして利用すると、都道府県の面積が情報伝達の邪魔をするという弊害があるのですが(北海道がやけに目立ったり、面積の小さい東京や沖縄の状況がわかりにくいなど)、位置関係や濃淡での伝わり方としては悪くないと思います。表や一覧で把握できるグラフと併用するとよいです。
また、都道府県別の人口やインターネット利用率のデータを扱う際は、東北地方の状況に考慮した方がよいでしょう。