「誰に何を売っているのか」

「誰に何を売っているのか」。あたりまえで簡単な質問のようですが、深い質問でもあります。自分たちのビジネスを考えるとき、片やお客様のビジネスのお手伝いをさせていただくとき、ときどきこの問いに立ち戻るようにしています。

たぶん根っこは同じ話。「誰に何を売っているのか」。僕はいまインターネットの領域のビジネスに身を置いていますが、Web解析をやってるWebアナリストである以前に、優秀なマーケッターでありたいと思っています。希望です。そしてもがいています。「誰に何を売っているのか」と偉そうに言う僕だって、そこから先は簡単な道のりではないのです。

だから実は、このブログでもできるだけWebの話を避けていたりもします。

さて、少し恥を忍んで、2年前の文章を晒してみようと思います。某サイトに載せたものなのですが、現在はそのサイトからリンクが切れているので、もうよいでしょう。いま読み返せば、時代が感じられたり、ちっちゃいやつだなとか強引なまとめ方だなとかトホホに思ったりしますが、根底の考えとしてはあまり何も変わっていません。

それではどうぞ。

註:以下は2007年4月の文章です。その時代の空気を思い出しながら、生温かい目でお楽しみください。

ビジネスブログに何を書けばいいのか

御社のビジネスは何ですか?

いわゆるビジネスブログで何を書いていいのかわからない、ネタにいつも困るといった声をよく耳にします。ある商品の担当者が、商品の機能を一から十まで語ってしまって、もう書くことがないと更新を止めてしまったりします。もったいない話です。

「誰に何を売っているのか」。これはマーケティングを考える上で非常に重要なポイントです。当たり前で簡単な質問のようですが、深い質問でもあります。これを考えることで、ビジネスブログで書くアイデアが見えてくることがあります。

花屋さんは、お花を売っています。しかし、お客さんの立場から見れば、美しい雰囲気や華やいだ香り、癒し、贈り物などがほしいのかもしれません。例えばチューリップそのものがほしいときもあるでしょうが、花であれば何でもいい場合もあります。さらに、造花でも絵画でもアロマでもよくて、花は選択肢の一つにしか過ぎないときだってあります。

花屋さんが「私たちはお花を売っています」と考えたときと「人生を豊かに過ごせるものを売っています」と考えたときでは、モノの見方が大きく違ってきます。自分たちのビジネスは何なのか、競合となる会社や業種はどこなのか、ターゲットとなるお客さんは誰なのか。

「お客さんは何を求めて花を買うのだろう」とお客様の立場でものを考えたとき、今まで見えなかったものが見えてくるはずです。その切り口で、何かアイデアが湧いてこないでしょうか。

シャンプーを製造販売している会社であれば、お客さんが買うのは「髪を美しくしてくれるもの」かもしれません。そうだとしたら、ブラシやドライヤーやヘアエステも競合商品です。そういう姿勢でシャンプーを捉えれば、その商品に新しい価値を見い出せるのではないでしょうか。その新しいアプローチで、なにかアピールすることはありませんか。

PPC広告やSEOでのキーワード、会社のビジョンの見直しにも

何もこれは、ブログネタに限った話ではありません。サイトのコンテンツはもちろん、PPC広告やSEOでのキーワード、ひいては会社のビジョンにもつながってきます。

佐々木俊尚氏著『検索エンジンがとびっきりの客を連れてきた! – 中小企業の Web2.0 革命』に出てくる企業の事例として、屋形船を営む会社と江戸切子を売るお店の話が出てきます。どちらも、検索エンジン対策と PPC広告に取り組み出し、徐々にキーワードの幅を広げていった、という話が展開します。本には明確な形で書かれていませんが、両者とも「自分たちの会社はいったい『何を』売っているのか」に気がついた点が大きなポイントではないかと思います。

当初は「屋形船」「東京湾 屋形船」といったキーワードを登録していたが、しばらくして「東京湾 夜景」「宴会 幹事」などとキーワードの幅をかなり広げるようになった。
そうしたのは、「屋形船」というキーワードだけでは客層が限られてくるということに気づいたからだった。たとえば、
「今度の宴会は、みんなで東京湾の夜景でも見たいね」
と社内で盛り上がっても、そこでいきなり「屋形船に乗ろう」とはならない。宴会幹事が東京湾の夜景を楽しむために検索エンジンで何かのサービスを探すとしても、「東京湾 屋形船」というキーワードはあまり使われない。そもそもが宴会で屋形船に乗るという発想が幹事の側にもともとないのだ。

『検索エンジンがとびっきりの客を連れてきた! – 中小企業の Web2.0 革命』 P130より

屋形船を営んでいる会社は、屋形船の乗船を売っているのではなくて風情を楽しむことを売っているのだ、と気がついたのです。ここに気がつくかどうかで、成功には差が出てくると思います。江戸切子を売るお店も、途中で「焼酎」といったキーワードに気がつき、大きく売り上げを伸ばします。

やれWeb2.0だロングテールだ、という掛け声に乗せられ、でも何にどう取り組んでいいのかわからずとりあえずブログを始めてみた、という担当者は、一度自分たちのビジネスを大きな視野で捉えてみてはいかがでしょうか。

(ここまで)

うわぁ、恥ずかしいなぁ。

「誰に何を売っているのか」という記事が僕の意識レベルを向上させてくれた件 | SEM-LABO
コンセプトの源泉: うらびゅー3.0

6件のコメント

  1. 「自分たちの会社はいったい『何を』売っているのか」これ大事ですよね。
    改めて自分のポジションを考えさせられました。
    ということで、早速紹介されている本も読んでみます♪
    ありがとうございました。

  2. 「誰に何を売っているのか」、狭い視野で考えないようにしていたいですね。
    紹介した本は、2年以上前の本なのでいま読むとちょっと時代を感じる本だと思いますが、いろいろ気づきはあるんじゃないかと思います。

  3. こんにちは。
    気付きから生まれる道、その先を、外資の代理店では「Bigaideia」と呼んでいました。それが見つかるかどうかで、その企画が決まる。
    残念なことに、今はそれを見つける仕事からちょっと横にそれていたりするのですが、いずれは戻りたい、と思っています。
    やはり、多くの人とものに出会うことって、大事ですよね♪

  4. 「Bigaideia」という言葉は初めて聞きました。
    その道を見つけるのはむずかしいのですが、向わなければいけない道ですね。

  5. はっと目が覚めました。
    ついつい、ウェブありきで全てをみております、、、。
    また忘れそうなときは、「覚せい剤」として
    また読ませてください。ありがとうございます。

  6. 僕も偉そうなこと言ってますけど、忘れがちなことなんですね。
    僕も気をつけています。

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