GA4代替のアクセス解析ツール候補、あるいはユーザーのデータをどこに預けるべきか

Googleアナリティクスのユニバーサルアナリティクス版の停止予定が発表された。

で、はたしてGA4は小規模サイトのアクセス解析ツールとして機能するのか、代替ツールっていま何がある?という話はa2iのセミナー編成委員会でも出ていて、他所でもその議論を見かけるので、ちょっとつらつらと書いていく。

お題。「GA4の代わりになる無料や低価格のアクセス解析ツール候補」。

ただし、ここで挙げるツールをすべてオススメしているわけではない。機能や条件として可能性のありそうなものをとりあえず挙げている。

GA4代替の無料や低価格のアクセス解析ツール候補

1. Matomo

Matomo

オープンソース。GA代替として機能面も申し分ない感じ。データも所有サーバーに保存。インストールにはMySQLのデータベースが必要なので、手軽に利用できる感じではないかもしれない。昔はPiwikという名前だったのでご存じの人多し。でも使ったことはない。

2. umami

umami

「もうPVやユーザ数とかだけでいい、CVもなくていい」とかであれば、こんなのでも良いのかもしれない。とてもシンプルでモダン。Adobeの人が作ってる模様。データも所有サーバーに保存。インストールはMySQLなどデータベースが必要。これも使ったことはない。

3. Ptengine

Ptengine

ここからはSaaS。Ptengineは日本での知名度は高い。ヒートマップツールの印象が強いが、基本的なアクセス解析の機能を備えている(Ptengine Insight)。一応無料プランも準備されているけれどもテスト計測のレベルなので、実質有料プランからの利用になる。一般的なビジネスユースの価格帯。使いやすい印象。

4. Juicer

Juicer

そういえばこんなのもあった。現在はログリーの提供。DMPだけどA/BテストやWeb接客系など多機能。基本的なアクセス解析の機能も備わっていそう。基本機能は無料。あまり詳しく知らないのは使ったことがないため。なぜ無料なのかに少し思いを巡らせても良いとも思う。

5. Mixpanel

Mixpanel

いわゆる皆が思うアクセス解析ツールじゃないかもだけど、把握したいイベントだけに計測を絞って目的をもって分析するにはパワフルなツール。小規模サイトなら無料プランでいけるのかもしれない。導入設計は必要。

ずっと興味を持っていながら後回しにしていてまだ触れていない系。なんとなくGA4も思想的にはこっち系のツールとも感じる。

6. Amplitude

Amplitude

Mixpanelと同じ系統のツール、だと思ってる。

7. Heap

Heap

これもMixpanelと同じ系統のツール、だと思ってる。

8. Woopra

Woopra

存在を忘れてた。10年以上前からあるツール。かつては無料で利用できる代替GAのポジションだった印象だけど、さらにリッチになっているように見受けられる。無料プランあり。

9. Clicky

Clicky

リアルタイム性をアピールしたシンプルなアクセス解析ツール。個人的にもかつて5年以上有償プランを利用していたこともあり、好きだったツール。ユーザー軸で分析ができてCVの設定もできる。無料版あり。有料でも小規模サイトなら年間1万円ぐらいじゃないですかね。

10. Yandex.Metrica

Yandex.Metrica

代替GAの最有力だったはずなのですが…。結構いいツールでした。無料、高機能、ヒートマップやセッションレコーディングもあり。ただし、ロシアYandex……。

11. 百度統計

百度統計

バイドゥでもアクセス解析ツールは提供されている。おそらく無料。ただし言語は中国語。2世代前ぐらいのGAという勝手な印象。

12. Microsoft Clarity

Microsoft Clarity

結局、世界の大手検索エンジンはアクセス解析ツールを出していて、これはマイクロソフトのツール。一応全ページを計測しているのでページ別PV数や環境面の統計情報などを出してくれるものの、セッションレコーディングとヒートマップに特化したツール。目的特化した分析にはすごく有用で日本でも多く導入されているけれども、普通のアクセス解析としては厳しい。

GAが普及してしまったおかげで、「GAの苦手な機能を持ち合わせたCRO系ツール」が増えた

上に挙げた中で「オススメを選ぶとしたらどれですか?」と聞かれたら、Clickyと答えると思う。いま見ればあまりモダンな見た目のツールではないけれども。

2022年3月28日追記。HubSpotを挙げるのを忘れてた。追記終わり。

Googleアナリティクスが類似の「一般的なアクセス解析ツール」を蹴散らしてしまったおかげで、世界的にも「ヒートマップやセッションレコーディングといったGAの苦手な機能を持ち合わせたCRO系ツール」が多くなった印象。汎用的に使えるツールが少ない。一方で、イベント計測を軸としたウェブ/アプリの計測ツールも増えた。でも「皆が使えるGAの代替ツール」はとても限られている。そりゃみんな無料で使えるGAを使ってるから。

新しいGA4は、大きなトラフィックがあってこそ機能やメリットを享受できるツールに感じる。逆に言えば小規模サイトには非常にトゥーマッチ。標準で準備されているレポートも現時点ではあまり有用とは感じない。

立ち位置的に、SMB向けアプローチのHotjarあたりがシンプルなアクセス解析機能を出してくれたりしないかな。

とはいえ、みんな困ったままというのも悲しいインターネットなので、「GA4をGoogleデータポータルでシンプルに扱えるようにテンプレートを配布する」というのをいま考えている。「ほとんどカスタマイズしないGA4と、データソースに手を加えないデータポータル」でどこまでできるんよという大きな壁はあるけれども、何かしらの助け船を造船したいなーと、先日シャワーを浴びているときに思った。まだ構想段階。

ユーザーのデータをそこに預けて大丈夫かという「信頼」

冒頭で「ここで挙げるツールをすべてオススメしているわけではない」と書いた。「プライバシーポリシーやCookie同意を経てユーザー行動等の情報を適切に扱う」という前提に立てば、アクセス解析ツールのデータがどのサーバーや国や企業に保存され、どのように扱われるかは利用する際によく理解しなければいけない。無料ツールを選ぶのであれば、なぜ無料なのかを理解してユーザーに説明できないといけない。

例えば上記で挙げたYandexのツールを選びにくくなったということは、他の国のツールであってもカントリーリスクのようなものは今後発生しうる。

「無料 / そこそこ使える / 簡単導入」の要素を備えるツールはもうなかなか思いつかない。またいまはそこに「信頼」の要素も加えなければいけない。ユーザーのデータをそこに預けてあるいは蓄積して大丈夫かどうか、という信頼。

なんというか、アクセス解析の領域はかつては穏やかな世界と思っていたし、実際そう思われていたと思うけど(SEOとか広告とかと比べてね)、この数年で一気にしんどい世界になった感じがする。「データだからこそ」か。法律やプライバシーや政治や国際紛争やら。もう全く違う世界に行きたいとすら思う。

一周回って「GA4しか勝たん」

さて、とはいえ、Google広告をはじめ他のGoogleプロダクトとの親和性と連携の高さを考えると、まずはどこにデータを蓄積するべきかといえば一周回って結局「GA4しか勝たん」というのはある。Google広告と連携してGA4よりうまく立ち回れるツールは他にあるかい?

データをそこに貯めるだけ貯めて、活用できる人は掘り下げればいいし、ダッシュボードやビジュアライズは連携ツールでやって、普段使いの分析はそもそも他ツールでやっても良いのかもとか、そういう話。

以上、ひとりごと。

ここまで書いておいてなんですが、当社ではGA4の導入に関するご相談を承っております。「移行や導入をしてほしい(事業会社様)」「アドバイザーとして入ってほしい(代理店様、Web制作会社様)」というご要望にお応えします。

Googleアナリティクス導入設定支援 (GA4) – 株式会社真摯

この記事は、2022年3月24日の一連のツイートを編集したものです。

Photo by Ruffa Jane Reyes on Unsplash