曜日別や時間別のサイト利用状況といったアクセス解析レポートは、ある種「古典的」なデータです。今回は、Googleアナリティクスを利用して、その「曜日軸」と「時間軸」の組み合わせでより立体的にユーザー像を捉えていくと同時に、PCやモバイルの「デバイスカテゴリー軸」を加えて、より詳しくユーザー像や行動を推測していく取り組みを紹介します。
古典的な「曜日別」「時間別」レポートだけではなく、両軸の組み合わせとデバイスカテゴリー軸を加えてユーザー像の理解に活用する
Googleアナリティクスには、曜日別や時間別のサイト利用状況を把握できる標準レポートは、執筆時では準備されていません(注)。ただし、値は取得しており、ディメンションと呼ばれる項目は準備されているので、カスタムレポートなどで利用できます。例えば「サイト全体の曜日別や時間別の、訪問やコンバージョンの状況」をまとめたカスタムレポートは、独自に作成可能です。
▲曜日別レポートの例
▲時間別レポートの例
注:AdWords経由のトラフィックに限定すれば、AdWordsと連携することで、標準レポートの「AdWords時間別」レポートにて「時間別」「曜日別」の状況がわかります。
このような曜日別や時間別の状況のレポートは、ある種アクセス解析の古典的なデータでもあり、目新しいものではありません。往々にして「で? (So what?)」になりがちです。
もちろん、「土日のトラフィック量は平日よりも小さいけれども、コンバージョン率が高い」といった状況把握や分析は、集客などに有効に活用できる情報です。特にBtoCのサイトでは活用できるでしょう。しかし、「曜日軸」と「時間軸」の情報が独立していることが多く、「ユーザーが、どういうシチュエーションで、またどういった目的で訪問し、コンバージョンに至ったのか」を推測するには、情報が少し足りません。
少なくとも曜日と時間の両方の軸を組み合わせて、なおかつ別の軸を設けてデータを見ていけば、少しずつユーザー像を推測、理解できるようになります。
今回は、以下のような取り組みの例を紹介します。
- 曜日軸と時間軸を掛け合わせて、サイト全体の訪問とコンバージョンの状況を把握
- PC端末やモバイル端末といったデバイスカテゴリー別に分けて、それらのカテゴリーごとのサイト利用状況を比較
- 上記の情報から、ユーザー行動の傾向、訪問の動機や目的を推測
曜日別、時間別の訪問数やコンバージョン数のデータを準備する
まず、曜日と時間の2つの軸でクロス集計したデータを取得しておきます。カスタムレポートでは、2つのディメンション(項目)で掛け合わせた状態のレポートを作成できます。ここでは、「曜日(もしくは曜日の名前)」と「時」の2つのディメンションで、訪問やコンバージョン系の指標を取得するレポートを作成します。
▲「曜日×時間」のカスタムレポートの例
※参考までに、今回使用する「曜日別、時間別レポート」のカスタムレポートを共有しておきます。「曜日別(曜日名)」「曜日別(曜日順)」「時間別」「曜日×時間」という4つのレポートタブに分かれており、今回は「曜日×時間」のレポートを利用します。
曜日別、時間別レポート(Googleアナリティクス カスタムレポート)
6か月間や1年間といった少し長めの期間を指定し、全データをCSVでエクスポート、その後エクセルで処理して整えれば、次のようなデータができあがります。
▲曜日×時間別の平均訪問数
▲曜日×時間別の平均コンバージョン数
今回は処理の説明を省略しますが、以下のようなことをしています。
- 「曜日」および「時」で、訪問数やコンバージョン数をソート
- 対象期間中のそれぞれの曜日の日数で割り、訪問数とコンバージョン数の平均値を出す
- 「曜日」を行、「時」を列にした表にまとめる
- エクセルの「条件付き書式」を利用し、数値の大きさに応じてセル色に濃淡を付ける
仮説を立てながら、曜日・時間別の状況を見ていく
「どういったことがわかるか」の前に、仮説を持ってデータに臨まなければいけません。まず簡単なところで「平日と土日では、訪問数やコンバージョン数にどれぐらい開きがあるか」「平日と土日で、時間帯のピークや傾向が異なるのではないか」など、ある程度の仮説を立てて、推測しながら見ていきます。
※もちろん、本来ならサイト構築や集客の際にユーザー像を想定しておかなければならないのですが。今回はそのギャップを見ていくという感じになります。
曜日別、時間別の訪問数の状況
「サイトA」にて、訪問数の状況を見てみます。この「サイトA」は、「学校(大学や専門学校など)」のサンプルです(サンプルのため数値は調整しています)。コンバージョンは、ここでは入学のための「資料請求」としておきます。
▲サイトA 曜日×時間別の平均訪問数
数字と色の濃淡から、訪問数は平日の方が土日よりもかなり大きく、全体的には平日の夕方(16時~17時)と夜の早い時間(20時~22時)にピークがあります。
曜日別に折れ線グラフでも表現してみます。
▲サイトA 曜日×時間別の平均訪問数
▲サイトA 曜日×時間別の平均訪問数(平日)
▲サイトA 曜日×時間別の平均訪問数(土日)
平日の時間別の推移に関しては、曜日で変化はほとんどありません。土日は平日と比べて大きく訪問数は減り、昼間から夕方に掛けても訪問はそれほど増えず、ピークは夜の早い時間(20時~22時)のみです。
こういった情報は、単なる「時間別訪問数」「曜日別訪問数」といったグラフだけからはわかりません。
▲サイトA 時間別訪問数
▲サイトA 曜日別訪問数
よくある「時間別訪問数」や「曜日別訪問数」だけでは、時間軸や曜日軸のそれぞれでピークなどはわかるのですが、立体的な把握としてはむずかしいです。
曜日別、時間別のコンバージョンの状況
次に、「サイトA」のコンバージョンの状況を見てみます。
▲サイトA 曜日×時間別の平均コンバージョン数
コンバージョン数では、平日の夜の早い時間(20時~22時)のみにピークが見られ、平日の夕方(16時~17時)にあった訪問数のピークに呼応するものは見られません。週初めの月曜日のピークは小さく、週末に近づくほどコンバージョン数は大きいようです。
▲サイトA 曜日×時間別の平均コンバージョン数
▲サイトA 曜日×時間別の平均コンバージョン数(平日)
▲サイトA 曜日×時間別の平均コンバージョン数(土日)
曜日別に折れ線グラフで見ても、訪問数の状況とは大きく異なることがわかります。
▲サイトA 時間別コンバージョン数、コンバージョン率(CVR)
▲サイトA 曜日別コンバージョン数、コンバージョン率(CVR)
曜日別、時間別の状況からわかること
- 平日の方が土日よりも訪問数はかなり大きい
- 平日と土日では時間別の訪問推移は異なり、平日は夕方(16時~17時)と夜早く(20時~22時)にピークがあるが、土日のピークは夜早くのみ。深夜0時を過ぎると訪問は大きく落ちる
- 平日夕方の訪問のピークにはあまりコンバージョンには至らず(学校からもしくは帰宅後のアクセスによる情報収集)、夜早くの時間帯に自宅からアクセスし、落ち着いた環境で資料請求などを行っている可能性が考えられる(両親と相談の可能性もあり)。これは、土日のアクセスが小さいながらもコンバージョンに至りやすいことからもうかがえる(コンバージョン率が高い)
- 平日は週末に近づくほどコンバージョンに至りやすい(学業などとの関連があるかどうか)
このような状況を、当初の推測と照らし合わせながら見ていくことになります。
PCとモバイルでの、曜日・時間別の状況の違いを把握する
サイト全体での状況だけでなく、セグメントに分けて見ていきましょう。セグメントは何においても重要です。
PC端末やモバイル端末といったデバイスカテゴリーによって、曜日別や時間別のサイト利用状況が異なることは多いに推測できます。特にBtoCのサイトでは、マルチデバイスでの利用を前提とした現状把握や分析をしなければいけません。経験上、かなりのBtoCのサイトで、PC端末とモバイル端末でのサイト利用状況は大きく異なっています。
PC端末での曜日別、時間別の訪問数の状況
PC端末での曜日別、時間別の訪問数の状況を見てみます。
▲サイトA(PC) 曜日×時間別の平均訪問数
▲サイトA(PC) 曜日×時間別の平均訪問数
▲サイトA(PC) 曜日×時間別の平均訪問数(平日)
▲サイトA(PC) 曜日×時間別の平均訪問数(土日)
PC端末での曜日別、時間別の訪問数の状況です。サイト全体の状況と似ていますが、ピークの時間帯が、より日中(11時~17時)に寄っているようです。サイト全体では見られた平日夜早くのピーク(20時~22時)はかなり小さくなり、11時から17時にかけて安定して訪問されています。また、平日と土日の訪問数の差がより大きくなっています。
▲サイトA(PC) 時間別訪問数
▲サイトA(PC) 曜日別訪問数
PC端末での曜日別、時間別のコンバージョンの状況
PC端末での曜日別、時間別のコンバージョンの状況を見てみます。
▲サイトA(PC) 曜日×時間別の平均コンバージョン数
▲サイトA(PC) 曜日×時間別の平均コンバージョン数
▲サイトA(PC) 曜日×時間別の平均コンバージョン数(平日)
▲サイトA(PC) 曜日×時間別の平均コンバージョン数(土日)
PC端末での曜日別、時間別のコンバージョンの状況です。母数が減ったために数字にばらつきが見られますが、傾向としてはおおむねサイト全体の状況と近いと言えるでしょうか。
▲サイトA(PC) 時間別コンバージョン数、コンバージョン率(CVR)
▲サイトA(PC) 曜日別コンバージョン数、コンバージョン率(CVR)
モバイル端末での曜日別、時間別の訪問数の状況
では、モバイル端末での曜日別、時間別の訪問数の状況を見つつ、PC端末の状況と比較してみましょう。
▲サイトA(モバイル) 曜日×時間別の平均訪問数
▲サイトA(モバイル) 曜日×時間別の平均訪問数
▲サイトA(モバイル) 曜日×時間別の平均訪問数(平日)
▲サイトA(モバイル) 曜日×時間別の平均訪問数(土日)
モバイル端末での曜日別、時間別の訪問数の状況です。PC端末での状況と比較すると、大きく異なっています。
- 日中や夕方のピークはなくなり、夜早く(20時~22時)の時間帯に向かって徐々に増加している。つまりサイト全体の夜のピークはモバイル端末の影響が大きい
- 土日と平日の訪問数の差がほとんどない。むしろ、9時から13時にかけて、土日の方が訪問数は大きい
▲サイトA(モバイル) 時間別訪問数
▲サイトA(モバイル) 曜日別訪問数
モバイル端末での曜日別、時間別のコンバージョンの状況
モバイル端末での曜日別、時間別のコンバージョンの状況を見てみます。
▲サイトA(モバイル) 曜日×時間別の平均コンバージョン数
▲サイトA(モバイル) 曜日×時間別の平均コンバージョン数
▲サイトA(モバイル) 曜日×時間別の平均コンバージョン数(平日)
▲サイトA(モバイル) 曜日×時間別の平均コンバージョン数(土日)
モバイル端末での曜日別、時間別のコンバージョンの状況です。コンバージョン数の時間別推移だけを見れば、PC端末と状況はよく似ています。しかし、訪問の状況がPC端末と状況が異なることと合わせて考えれば、モバイル端末の方は訪問がまんべんなくコンバージョンに至っていることになります。
木曜日で全体的にコンバージョン数を多く獲得していますが、施策の影響や突発的な異常値かどうかは探る必要があるでしょう。
▲サイトA(モバイル) 時間別コンバージョン数、コンバージョン率(CVR)
時間別のコンバージョン率を見ても、10時から23時にかけてコンバージョン率は1.5%前後で安定して推移しており、PC端末ほど大きな変化がないことがわかります(PC端末では1.0%~2.2%で推移)。
▲サイトA(モバイル) 曜日別コンバージョン数、コンバージョン率(CVR)
PC端末とモバイル端末の状況から、曜日と時間別のユーザーのサイト利用状況を推測する
以上のことから、どういったことを導き出せるでしょうか。
まず、この「サイトA」に限らず、多くのBtoCのサイトでモバイル端末の利用が大きく増えている(増え続けている)はずです。サイトの利用が、PCからモバイルにシフトしているということです。「サイトA」でもこのモバイルへのシフトの影響があるはずです。本来ならこの1年前のデータと比較して検証する必要がありますが、「平日の夜」「土日の日中」のアクセスは、PCからモバイルに移っている可能性があります。
ここからは仮説です。
- 平日の日中から夕方にかけては、学生本人が学校のPC端末でアクセス。目的は「情報収集」と「比較検討」が中心
- 平日の夜20時~23時にかけて、自宅で再度アクセス(PC端末orモバイル端末)。両親と相談しながらの可能性あり(その場合、両親はモバイル端末を中心に利用の可能性)。目的は「比較検討」と「資料請求」
- 土日の訪問は、平日の比較検討を受けて、腰を落ちつけての資料請求の意向が強い再訪問。学生本人(+両親)。コンバージョン率は高い
- 土日のモバイル利用の高さ、および平日夜のモバイル利用の高さを踏まえると、タブレットの利用も多いのではないか(要検証)
- 資料請求(コンバージョン)の際には、両親と相談しながらというシチュエーションも多いのでは(体験入学の際のヒアリングや、在校生へのヒアリングで検証可能)
広告施策やサイト更新、ユーザーとのコミュニケーションなどに活用する
このように導き出した内容を、どうアクションに活かせばよいでしょうか。サイトの状態や施策、顧客との関係性によって異なってきますが、一例として以下のようなものが考えられます。
- 広告施策への反映
- 曜日や時間、デバイスカテゴリーで露出を調整
- 金土日に、より再訪問を喚起する内容の広告を提示
- サイト更新、ブログ更新、TwitterやFacebook投稿の、それぞれの内容やタイミングへの反映
- メールやログイン会員向けのアプローチが可能であれば、時間や曜日を考慮したメール配信や通知
PCサイトとスマートフォンサイトでどのように情報を提供しているか(コンテンツ内容やボリュームなど)にも大きく左右されます。PC端末とモバイル端末で、サイト利用時の目的が大きく変わらないのであれば、基本的には同じ内容の情報を提示した方がよいでしょう。
このような分析をする際の手順としては、以下のようなものになります。
- 主要なユーザー像と、その利用シーンを想定する
- 利用シーンごとの訪問のモチベーションを想定する
- (PCサイトやスマートフォンサイトの体裁を整備する)
- デバイスカテゴリーごとに、曜日別、時間別のサイト利用状況を把握
- 施策への反映
- 集客
- 再訪問の喚起
- サイトや更新やメールでのアプローチを含めたコミュニケーション
- サイトコンテンツへの反映(不足している情報の補完)
データは活用しなければ意味がありません。
データを扱う際は、異常値や祝日などに考慮する
曜日別、時間別のアクセス解析データを扱う際、いくつか注意しなければならないことがあります。
- 突発的なアクセス増加やコンバージョン数増加の考慮(異常値の考慮)
- 祝日の考慮(特に月曜日)
- 広告やメールなどの集客施策や、サイト更新の影響の考慮
- サンプリングの影響の考慮
1. 突発的なアクセス増やコンバージョン数増の考慮(異常値の考慮)
「メディアに取り上げられた」「オフラインで大きなキャンペーンを展開した」など、さまざまな理由で突発的に訪問やコンバージョンが増えることがあります。こういった異常値は、曜日別と時間別の両軸で見る際には大きく影響します。判別しているものがあれば、あらかじめ除外しておくとよいでしょう。
Googleアナリティクスのアドバンスセグメントでは「訪問日(YYYYMMDD)」というディメンションが利用でき、任意の日付のデータだけの除外ができます。
2. 祝日の考慮(特に月曜日)
平日に祝日が含まれる場合、それを考慮する必要があります。許容範囲として含んだ状態で見ても構いませんが、月曜日が祝日になっているケースが多いことに留意しておく必要があるでしょう。
3. 広告やメールなどの集客施策や、サイト更新の影響の考慮
当然の話ですが、訪問やコンバージョンといったサイト利用状況は、広告やメールなどの施策の影響を受けます。特定の曜日にメールマガジンを配信していたり、一定期間実施したWebキャンペーンや運用中のリスティング広告も、結果に反映されます。データという結果だけから判断するのではなく、実施している施策を踏まえた上で仮説を立て、それからデータを見るようにしなければなりません。
4. サンプリングの影響の考慮
Googleアナリティクス プレミアムでなければ、Googleアナリティクスで長期間のデータを扱うとサンプリングの影響を受けやすくなります。データ量が多いほど、一括で処理すればデータの正確性は低くなります。精度を担保するのであれば短期間のデータを別途集計し、傾向を見るのであればサンプリングデータという前提で処理を速める、といった判断も必要です。
まとめ
今回は、「曜日別」「時間別」といった古典的とも言えるアクセス解析データを用いてユーザー行動を推測する方法を取り上げました。また、わかりやすくPC端末やモバイル端末といったデバイスカテゴリーごとに見ていく例でした。
他にもさまざまな切り口があります。
- 指名の訪問(直接アクセスと指名系キーワードでの検索訪問)と、非指名の訪問
- キャンペーン向けランディングページへの訪問と、それ以外の訪問
というように、訪問の際のシチュエーションや動機、目的が大きく異なるだろうカテゴリーに分けて、曜日別、時間別のデータを見ていくと、よりユーザー像の把握につながります。あまり細かな分類は母数が分散するためおすすめしませんが、いくつか試してみるとよいでしょう。