ビルコムが「企業とブロガーの関係に関する調査」の報告書を発表しています。
(以下のリンク先はPDFファイルです)
企業とブロガーの関係に関する調査 企業がブロガーに、積極的に情報開示することについて「賛成」72.0% 宣伝のためお金を渡す行為については「反対」44.5%
この調査報告の見出しは正確ではありません。見出しの前半部分は問題ないと思いますが、後半部分はかなり誘導的な見出しになっていると感じます。
報告書の詳細を読めばわかりますが、「企業がブロガーに宣伝のためお金を渡す行為について、「賛成」55.5%、「反対」44.5%」が正解のはずです。
そのためか、各メディアの取り上げ方も、一見正反対のことを言っているような感じになっています。
- 企業がブロガーにお金を渡す行為、55.5%が「賛成」 – INTERNET Watch
- 「企業が宣伝のためにブロガーにお金を渡す」はNG–ビルコム調べ – CNET Japan
- 「お金をもらったブロガーのオススメ商品は信用しない」8割。ビルコム、企業とブロガーの関係を調査 – MarkeZine
- あなたは信用しますか? 企業から報酬をもらって書いたブログ記事を – MYCOMジャーナル
- 企業がブロガーに宣伝のための報酬を支払う行為を反対しているのは44.5%–ビルコム調査 – Web担当者Forum
- お金をもらってブログを書くのはあり?〈市場調査〉 – ASCII.jp
「意見は二分している」と捉えるのが公正な見方だ思います。ただ、ポイントはそこにはないように思います。
お金をもらってブログを書いたのか、本当にブロガーが良いと思ったのか
この報告書の要旨には、最初に挙げた2項目以外にも重要な項目があります。
企業からお金をもらって書いているブログは、「友人・知人のブログ」「知らない人のブログ」関らず、「信用できない」。
これは、Q7からQ9の設問から導いている結論です。Q7からQ9は以下のようなものです。
Q7.自社商品(サービス)のオススメを書いてもらうため、企業がブロガーにお金を払う場合があります。そのことを知っていましたか?
Q8.(Q7.ではいと答えた方)
企業からお金をもらって書いている友人・知人のオススメ商品(サービス)を信用しますか?
Q9.(Q7.ではいと答えた方)
企業からお金をもらって書いている知らない人のオススメ商品(サービス)を信用しますか?
確かにこういう質問をされたらネガティブな答えをしてしまいがちですね。僕もおそらく「いいえ(信用しない)」と答えるんじゃないかと思います。
でも、実際は違います。
そのように企業からお金をもらって書かれたブログ記事を見たとき、僕は信用することもあれば信用しないこともあるでしょう。その内容が深ければ信用する可能性もありますし、ゴミ記事だと判断すればそのページを閉じるだけです。そのブロガーが本当に良いと思ってその記事を書いたのかを判断するのは、僕なのです。お金をもらっていようがもらっていまいが、ブロガーが本気でおすすめしていると僕が判断すれば、それは信用に値する記事だと思います。
Q6の選択肢「お金をもらってブログを書いたのか、本当に書き手が良いと思ったのかがわからず読者の混乱を招くから」が、この報告のキーだと思います。
結局そうですよね。「お金をもらっている」を基準にブログ記事を判断するのであれば、僕もこのブログで Amazon のアフィリエイトを利用しているので、信用に値しない記事を書いていることになり得ます。もちろん、僕はお金のためだけにブログを書いているのではありません。
確かに、ブロガーに報酬を与えてブログ記事を書いてもらうサービスは数多く存在し、今後いろんな意味でそのモデルは世間に好意的に受け入れられるとは僕も思えませんし、うまくいくとも思えません。そのサービスの仕組みが CGM マーケティングだというのかもしれませんが、CGM であるからこそ誇張や嘘は最終的にはバレてしまいます。上原仁さんの言うところの「正直マーケティング」ではないですが、そのバレたときのマイナス面は、提灯記事によって表面的に生まれた口コミのプラス要素よりも、遙かに大きいはずです。
WOM勉強会を主催されている河野武さんの「ブログPR広告は終わった、ぼくの中では – takeshi kouno’s blog」というエントリーにも、大筋同意しますし、WOM勉強会の報告「ブログPR広告って儲かる!?」も参考になります。
けれども(いや、だからこそ)、「企業がブロガーにお金を払う」仕組みについては、ありだと思うのです。そのブロガーがその企業や商品やサービスのファンで、そのファンによる紹介に何らかのメリットを与えるのは、きっと間違っていないはずです。
ONEDARI BOYSや100SHIKI PR Board、Agile Media Network といった「信頼のおけるブロガーのネットワーク」などに、そのあたりの解の片鱗があるような気がします。うまく伝えられないのですが。
全然まとまっていませんが、ビルコムの調査報告の内容とそれのメディアの取り上げ方、ソーシャルメディアでの捉えられ方に少し違和感を覚えたので、つらつらと書いてみました。あとでまた何か書き足すかもしれません。
ひとつ、調査対象のインターネットユーザー400名のうち、ブロガーがどれだけ含まれているのかもちょっと気になるところです。
企業側も、安易に「ブロガーによる口コミを利用しよう」と考えるのではなくて、「ブロガーとコミュニケーションしよう」と発想することで、だいぶニュアンスが変わってくるのではないでしょうかね。