面と向かったコミュニケーションにおいて、顔の表情、とりわけ「笑顔」は、雰囲気を和らげたり親愛の意を表現するというような、大きな役割を持っています。その役割を、ウェブでどう補っていくのか、というお話。
ぎこちないコミュニケーションも、笑顔ひとつで立て直せる
先日、小さなハンバーグ屋さんでランチをしていたときのこと。ホールでひとりでがんばっている若い女性の店員の接客は、どことなくぎこちない感じでした。まだこの店で始めて1か月とか、そんな感じでしょうか。お辞儀はとても気持ちがよいものでしたが、「そこで水とメニューを持って行けば効率よく動けるのに」「パントリーに入り込んでしまったら、客席からの声が聞こえにくいのに」など、ちょっとどきどきひやひやしながら、その女性の動きを観察していました。
実は、飲食店でホールの店員さんを観察するのが趣味です。僕が飲食業や接客業にしばらくいたことがあるからという職業病みたいなものですが、ホールの店員さんのお客さんとのコミュニケーションを、よく観察しています。まあたいていは、「お客さんが呼んでるのに気づいてないよ」とか「そういう案内はもう少しこうしたらいいのに」と、余計な親父のお節介ばかりですが。
話を戻します。そのハンバーグ屋さんの店員さん、笑顔がとても素敵だったのです。
レジでの仕草が少しぎこちなくても、その笑顔で許せる、というような笑顔。笑顔が素敵な人は、やっぱり少し得をします。そうやって、フラフラして安定しないコミュニケーションも、笑顔ひとつで立て直せたりします。モヤモヤした雰囲気にも、晴れ間が出てきます。人と人が文字どおり面と向き合う接客業は、顔の表情ももちろんコミュニケーションのひとつ。すごく大事。
コミュニケーションは、内容、仕草、表情、距離、いろんな要素が絡みます。面と向かったコミュニケーションは、その場に応じて調節ができます。
ウェブは「表情」を伝えにくい世界
一方、ウェブの世界。
もう最近は、「ウェブの世界」「現実の世界」と分けて考えなくてもよいくらいになってきました。一方通行ではない双方向なやりとりや、リアルタイムなコミュニケーションがずいぶん増えてきました。
それでもやはり、表情は伝えにくい要素です。いまのところ、リアルタイムではウェブカメラを使ったチャットやコミュニケーションぐらいでしょうか。「素敵な笑顔」のコミュニケーションは、ウェブではまだまだむずかしいのです。
メールやTwitter、Facebookなどのメッセージングでは、感嘆符「!」や顔文字、スマイリーなどを使うことで、代替としての「表情」を伝えることができます。僕も、メールなどでは意識的に感嘆符「!」を使うようにしています。ほら、「ありがとうございます。」よりも「ありがとうございます!」の方が、表情が垣間見れてちょっとうれしいでしょ。
でも、たとえば一般的なサイトのページ、仮に「レガシーなページ」と呼んでみることにしますが、ここでそのような笑顔をはじめとする「表情」を、あまり見ません。
すました顔で、事務的に情報を提供している感じ。あるいは案内板。あるいは「会場はこちら」のプラカードを持って交差点で立っている、リンク先を誘導する人(しかも電信柱に隠れて見えにくい)。
全然ウェルカムな感じを受けない。
「とてもウェルカム」「とっても笑顔」「とっても親切」って大事
もちろん、ビジネスでやっているサイトで業種によっては「表情」は必要ない、というのもあるでしょう。ビジネスに笑顔はいらない、歯を見せるな、ええごもっとも。伝わればいい、ええ確かに。お問い合わせいただければあとはリアルな人間が対応するから、なるほどなるほど。
それでもやはり、レガシーなページでは、「とてもウェルカム」「とっても笑顔」「とっても親切」「いらっしゃいませ」というのが必要だと思うんです。サイトのどのページも「ランディングページ」となりうるいま、どのページも「ウェルカムさ加減」を表現しないと、コミュニケーションとしてもったいないです。
たとえば、ランディングページ
ランディングページ。いろんな作りがありますが、
- 注意を引きつけて
- 興味を持たせて
- いいね、ほしいねと思わせて
- (事例とかお客様の声とかで)確信させて
- 購入してもらう、アクションを起こしてもらう
というのがひとつの流れでしょうか。広告の受け皿としてのランディングページなら、1ページにこれらの要素が詰まることが多いです。
そうすると、「ランディングページ」として意識して作っている人ならわかると思いますが、「とってもウェルカム」なページの作りになってきます。要素要素から笑顔が見え隠れしていてもおかしくないくらいのページ。とても親切丁寧。
ウェブ、とくにレガシーなページは、まだまだ「現実の世界」と比べて臨機応変にその場に応じて調節することがむずかしい場です。レコメンデーションのツールや、訪問者の属性によって要素を出し分けるツールもありますが、まだ一般的に利用されているレベルではないでしょう。いや、ECサイトではレコメンデーションツールは普及しているようですが。
「そこまで必要ないでしょ」と思うかもしれません。でも、たとえば簡単な例を挙げると、「そのページに十分で親切な情報が載っている」のと「(お客様の声は)リンク先にある」のとでは、ひとつものすごく大きな違いです。そういう機能的な「親切さ」だけじゃなく、説明文、補足する写真や画像、お声掛けして引きつけるコピー、and so on。みなどれも大事です。
ウェブの世界での、ある種の「表情」のひとつの形。いや、表情にはほど遠いかもしれないけれど、その役割を補完するもの、代替としての表情や笑顔。ウェルカムさ。
誰もちゃんと読まないからって、キーワードを適当にちりばめただけとか、そんなのじゃ決してない。
どのページも、ランディングページなんですから。
ウェブに笑顔を、ウェブに表情を
ウェブにはまだ、無表情なページが多すぎます。もっとウェルカムでもっと笑顔で、もっと親切でもっと「いらっしゃいませ」なページが増えれば、ウェブでのビジネスももう少し良くなると思っています。
僕はウェブのビジネスのコンサルティングをしています。分析をしてからの改善提案の内容のひとつは、この「ウェブでのコミュニケーションをもっとウェルカムにする」作業とも言えます。たとえ説明がパーフェクトじゃなくても、堅苦しくても、ものすごく素敵な笑顔でウェルカムな応対してくれるような、そういう「コミュニケーションの意志」が見えるようなものを、ひとつ目指していたりします。
もっと、ウェブに笑顔を。ウェブに表情を。ウェブにウェルカムさを。
えーと、ご静聴ありがとうございました、と締めくくっておいた方がいいかな、この文章の長さは。