前回のエントリー記事「中小企業とWeb2.0」の続き。
実際の「商売」の部分は Web2.0 とはあまり関係がない、と書きましたが、「自分たちの会社はいったい『何を』売っているのか」という、まさしく商売の部分の理解があるほど、「Web2.0 の時代」にうまく効果を出せるのではないでしょうか。
「自分たちの会社はいったい『何を』売っているのか」。化粧品メーカーは化粧品を売っているのではなく「美しくなるためのもの」を売っていて、果物屋さんは果物ではなく「健康的な生活を送れるもの」を売っています。IBM の取締役だった方は、「我々はコンピュータを売っているのではなく、問題解決のためのソリューションを売っているのだ」と言っていたそうです。
佐々木俊尚氏著『検索エンジンがとびっきりの客を連れてきた! – 中小企業の Web2.0 革命』に出てくる企業の事例として、屋形船を営む会社と江戸切子を売るお店の話が出てきます。どちらも、検索エンジン対策と PPC広告に取り組み出し、徐々にキーワードの幅を広げていった、という話が展開します。本には明確な形で書かれていませんが、両者とも「自分たちの会社はいったい『何を』売っているのか」に気がついた点が大きなポイントではないかと思います。
当初は「屋形船」「東京湾 屋形船」といったキーワードを登録していたが、しばらくして「東京湾 夜景」「宴会 幹事」などとキーワードの幅をかなり広げるようになった。
そうしたのは、「屋形船」というキーワードだけでは客層が限られてくるということに気づいたからだった。たとえば、
「今度の宴会は、みんなで東京湾の夜景でも見たいね」
と社内で盛り上がっても、そこでいきなり「屋形船に乗ろう」とはならない。宴会幹事が東京湾の夜景を楽しむために検索エンジンで何かのサービスを探すとしても、「東京湾 屋形船」というキーワードはあまり使われない。そもそもが宴会で屋形船に乗るという発想が幹事の側にもともとないのだ。
『検索エンジンがとびっきりの客を連れてきた! – 中小企業の Web2.0 革命』 P130より
屋形船を営んでいる会社は、屋形船の乗船を売っているのではなくて風情を楽しむことを売っているのだ、と気がついたのです。ここに気がつくかどうかで、成功には差が出てくると思います。江戸切子を売るお店も、途中で「焼酎」といったキーワードに気がつき、大きく売り上げを伸ばします。
「Web2.0」は、企業にとってそれだけではたぶん魔法ではありません。ただ、これまでの「商売」と組み合わせることで思いがけない効果が出たりするものだと思います。「商売」の部分が強ければ、大企業とも渡り合えるだけの力を差し出してくれるのが、「Web2.0」のテクノロジーなんじゃないかと思います。