2012年アクセス解析業界10大ニュース

2012年を振り返って、アクセス解析業界の10大ニュースを選んでみました。日常的にこの領域周辺のニュースを追いかけていることもあり、せっかくですので1年を振り返ってみます。

近年、アクセス解析データをはじめとしたデータを根拠に、Webサイトの運営やWebマーケティングに取り組む企業が一層増えてきました。その領域に目を向け始めた企業もいらっしゃいますし、以前から取り組んでいる企業はさらに進んだ取り組みに向かっています。それらを加味して選びました。

2012年アクセス解析業界10大ニュース

  1. 「訪問」軸から「ユーザー」軸の分析へ
  2. スマートフォン端末からのトラフィック増加、マルチデバイス化への対応
  3. Google検索のSSL暗号化が日本でも導入、検索キーワードの分析に影響
  4. Googleアナリティクスの大幅な機能拡張
  5. 広告配信運用側との連携や統合管理が進む
  6. グーグル、有償版「Googleアナリティクス プレミアム」の日本での提供を発表
  7. タグマネジメントツール、各社次々にリリース
  8. グーグル、「Urchin」の販売を終了
  9. スマートフォンアプリ分析の興隆
  10. データを根拠に改善を行う市場の拡大

なお、便宜上「アクセス解析」という名称を使用します。一般的な認識でとらえられるアクセス解析と広告効果測定を中心とした領域を範囲とします。「Web解析 (Web Analytics)」「デジタル・アナリティクス (Digital Analytics)」と同じニュアンスととらえていただいて結構です。SFAやCRM、マーケティングオートメーションの領域は少し遠かったりかぶっていたりしますが、無関係でもありません。

なお、結果としてグーグルに関するニュースを多く取り上げる形になりましたが、他意はありません。インパクトの大きいトピックスが多くあったのは事実です。

日付は正式発表があった日時で統一しているため、公式ブログなどの投稿日時と異なる場合があります。

1. 「訪問」軸から「ユーザー」軸の分析へ

アクセス解析はこれまで「訪問」を軸としたものが中心でしたが、「ユーザー」軸での流れが加速し、その基盤も整ってきたのが今年でした。2010年頃より、各方面からアトリビューション、コンテンツマーケティング、インバウンドマーケティング、リードナーチャリングといった言葉が飛び交っていましたが、それがある程度形になってきた時期でしょうか。

2012年3月にアドビ システムズはDiscoverにユーザー単位での分析機能の追加を発表し、10月にグーグルは「ユニバーサル アナリティクス」の概念を発表しています。訪問軸の分析がなくなることはありませんが、ユーザー単位での把握が今後より重要になってきます。

2. スマートフォン端末からのトラフィック増加、マルチデバイス化への対応

スマートフォン端末やタブレット端末の市場急拡大に伴い、Webサイトのトラフィックにおけるスマートフォン端末利用者のインパクトがさらに大きくなった年でした。BtoC向けのサイトであれば、全体の半分近くがスマートフォン端末でのアクセスというケースもあるでしょう。スマートフォン端末向けにWebサイトでどのように情報提供するかと合わせて、前提となるツールの実装やデータの分析も、より高度で緻密なものが求められてくるでしょう。

3. Google検索のSSL暗号化が日本でも導入、検索キーワードの分析に影響

ユーザーのプライバシー保護を目的としてアメリカで2011年に実施されたGoogle検索のSSL暗号化が、3月に日本でも発表、実施されました。これにより、アクセス解析の中でも重要な項目の一つである「検索キーワード」の一部が判別できなくなり、ユーザーのモチベーションの分析に少なからず影響を与えました。

4. Googleアナリティクスの大幅な機能拡張

多くの企業で利用されているGoogleアナリティクスで、目を見はる大幅な機能拡張が進んだ年でした。スプリットテストツールの統合、AdWordsとのさらなる連携、ユニバーサル アナリティクスの発表など、有償ツールでなければ実現できなかった高度な分析が無償利用でも可能となりました。

5. 広告配信運用側との連携や統合管理が進む

広告運用側のデータをはじめとした各種データとの連携や、「統合プラットフォーム」での管理がより進んだ1年でした。下記に挙げたものは一部で、広告配信側、運用側、ベンダー側など、海外からも含めて主要各社から統合管理システムやツール連携がそろい、今後の活性化が見込まれます。

6. グーグル、有償版「Googleアナリティクス プレミアム」の日本での提供を発表

昨年10月にアメリカとイギリス、カナダで開始した有償版「Googleアナリティクス プレミアム」を、グーグルは日本でも正式に提供することを発表しました(2012年10月29日)。執筆時点ではまだ公式にリセラーは発表されていませんが、従来無償のため公式なサポートが受けられなかったGoogleアナリティクスに、SLAに基づくサポートが受けられるプランが設けられることになります。

7. タグマネジメントツール、各社次々にリリース

タグマネジメントツール(ワンタグソリューション)は広告側の各社より数年前から提供されていて目新しいソリューションではなかった状況の中、なぜか10月に集中して新たに数社からリリースされました。これは日本だけの傾向でしょうか。グーグルが無償で「Google Tag Manager」を発表したインパクトは大きいです。

8. グーグル、「Urchin」の販売を終了

2012年1月20日、グーグルはサーバーログ型のアクセス解析ツール「Urchin」の販売終了を発表しました。アクセス解析を黎明期から支えてきた老舗ツールであり、驚く一方で新しいGoogleアナリティクスとの世代交代を感じさせるニュースでした。

9. スマートフォンアプリ分析の興隆

Localytics、MOBYLOG、Flurry、Appvisor(旧AppTracker)をはじめとしたスマートフォンアプリ解析、その他アプリ広告の効果測定ツールなどが、群雄割拠の状態でそろった状況でしょうか。Googleアナリティクスから「Mobile App Analytics」として新たなSDKとともに提供が始まったのも今年でした。一方で、主要ゲームアプリ提供会社でもそれぞれ独自に分析を行っていると耳にします。

いずれも僕が積極的に関与していない領域のため把握しておりませんが、きっとこの領域で何かが大きく動いているはずだろうということでピックアップしました。

10. データを根拠に改善を行う市場の拡大

アクセス解析をはじめとしたデータを根拠にWebビジネスの改善を行う市場が着実に拡大していると感じます。このトピックスに関しては推測であり、体感的なものです(「データを根拠に」と言いながら体感的にピックアップしているというのも変な話ですが、2012年の市場拡大を示すリサーチデータなどはまだどこからも発表されていませんのでご容赦を)。

アクセス解析のデータをもっと活用していきたいという声を一層耳にするようになりました。これまでずっと取り組んでいた企業はさらに進んだ活用を、これまで未着手だった企業もこれからは積極的に、という前のめりな意気込みを様々な場面で感じます。

ありがたくも当社(株式会社真摯)もお声掛けをいただく機会が増えました。おかげさまで、なかなか工数の捻出がむずかしくなり新しい案件を請けにくくなっているというのが現状です。当社も「根拠を元に改善のご提案する」コンサルタントを募集しております。ぜひお待ちしておりますという言葉をどさくさに紛れた〆として、2012年アクセス解析業界10大ニュースのエントリーを終えたいと思います。